最判令和7年4月17日(ジュリ2025-1613-4)
事案
Y市の市営バスの運転手であったX(勤続29年)は、①受け取った運賃1000円を着服したことおよび②電子タバコを吸うことが禁止されているバス車内で、乗客のいないときに5回、電子タバコを吸ったこと、を理由として懲戒解雇処分を受け、さらに退職手当(約1100万円)についても全部不支給とする処分を受けたため、取消訴訟を提起した。
原審の大阪高裁は懲戒免職処分は裁量の範囲内として請求棄却したが退職手当不支給処分については裁量権の濫用であるとして請求を人ようした。Yが上告。
最高裁の判断
Yによる懲戒免職処分のみならず退職手当不支給処分についても裁量の範囲内として原審のY敗訴部分を破棄、Xの上告棄却。
コメント
Xは地方公務員ではあるが、従事していた業務はバスの運転手であって現業的なものであり、権力的公務とはいえず、民間のバス事業者の運転手と変わりはない。
もし本件が民間のバス事業者の従業員であれば、従業員に非違行為があって何らかの懲戒が加えられるとしても、一般に退職金は「生活保障」であるとか「給料の後払い」の性格があるとされる。このため、退職金不支給については違法とされる可能性が高いといえる。しかし最高裁は公務員たるXに対する本件処分は適法とした。
本件退職手当不支給処分が是認される根拠はXによる行為により公務に対する信頼が毀損されたということにあるが、本件のXの非違行為についてみれば、着服した金員は1000円であり(当然被害弁償はされている)、禁止されている電子タバコの使用も乗客のいない時であったという点からすればそこまで重大とも考えられない。しかるにXが勤続29年であったという点を考慮したとしても、Yの判断に裁量の逸脱濫用ありとはいえないとされた。
加えて、本件と同様の判断を示した近時の最高裁判例は公立学校教師の飲酒運転による交通事故の事案(最判令和5.6.27)、市職員による飲酒運転による交通事故の事案(最判令和6.6.27)があり、本件判決はこれに続くものとなる。
判例は公務員に対する信頼保護を極めて重視しているということになる。
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